感染性胃腸炎は、原因がウイルスの場合、人から人へうつります。嘔吐や下痢がある間は感染力が強いため、感染性が疑われる場合は仕事や学校を休むことが望ましいとされています。
このページでは、感染性胃腸炎は人にうつるのか、仕事や学校はいつまで休むべきか、何日程度で回復するのかについて解説します。
INDEX
感染性胃腸炎は人にうつる?感染経路と注意点
細菌性胃腸炎の多くは食べ物を介した感染(食中毒)ですが、O157など一部の菌では人から人への感染が起こることもあります。ウイルス性胃腸炎の代表であるノロウイルスやロタウイルスは非常に感染力が強く、わずかなウイルス量でも感染が成立します。感染経路は主に以下の3つです。
接触感染
感染者が触れたドアノブ、手すり、トイレなどに付着したウイルスが、手を介して口に入ることで感染します。
飛沫感染
感染者の嘔吐物が飛び散った際、乾燥した嘔吐物や便が清掃時などに舞い上がり、口に入ることで感染することがあります。
経口感染
感染者が十分に手を洗わずに調理した食品を食べることで感染します。また、二枚貝(カキなど)は海水中のノロウイルスを体内に蓄積する性質があるため、ウイルスを含んだ二枚貝を生食や加熱不十分な状態で食べることでも感染します。特に注意が必要なのは、ウイルスの排出期間が長いことです。症状が治まった後も、数日〜2週間程度、場合によってはそれ以上便中にウイルスが排出されることがあります。家庭内では、感染者が使用したタオルや食器の共用を避け、トイレは使用後に消毒することが大切です。また、感染者の看病をする際は使い捨て手袋を着用し、看病後は必ず石けんで手を洗いましょう。
感染性胃腸炎になったら仕事や学校は休むべき?
感染性胃腸炎と診断された場合、または疑われる症状がある場合は、仕事や学校を休むべきです。症状がある間は感染力が最も強く、周囲に感染を広げるリスクが高いためです。
学校の場合
感染性胃腸炎(主にノロウイルスなど)は、学校保健安全法で第三種の感染症に位置づけられています。学校で流行を防ぐ必要がある場合に、校長が学校医の意見を聞いて出席停止の措置を取ることができます。一般的には、症状が治まってから48時間(2日間)は登校・登園を控えることが望ましいとされていますが、明確な法的規定はなく、医師の判断や学校・園の方針によって対応が異なります。
一般的には嘔吐や下痢などの症状が完全に消失してから24〜48時間は登校を控えることが望ましいとされています。休むべき期間の目安は以下の通りです。
- 嘔吐や下痢などの症状がある
- 症状消失後24〜48時間
- 発熱がある場合は解熱後24時間
職場の場合
職場についても法的な規定はありません。しかし、食品を扱う職種や医療・介護職では、症状消失後もさらに就業制限が設けられる場合があります。その場合、休むべき期間は職場規定に準ずるものとなります。
飲食店や給食施設、医療機関、介護施設、保育施設などで働く方は、症状が軽くても必ず医療機関を受診し、職場に報告しましょう。これらの職場では、一人の感染者から大規模な集団感染につながる可能性があります。
復帰のタイミングについては職場の規定を確認し、必要に応じて医師に相談することをおすすめします。
感染性胃腸炎は何日で治る?回復までの期間と経過
感染性胃腸炎は、原因となるウイルスや細菌によって回復までの期間が異なります。多くの場合は2〜7日程度で症状が落ち着きますが、乳幼児や高齢者では回復に時間がかかることがあります。完全に回復するまでの期間は個人差があり、体力や免疫力の状態によっても変わります。
主な原因別の回復期間の目安は以下の通りです。
ノロウイルス
発症から1〜2日程度で症状のピーク迎え、その後2〜3日で回復に向かいます。激しい症状が出ますが、比較的短期間で回復することが多い一方、嘔吐が激しいため脱水に注意が必要です。
ロタウイルス
主に乳幼児に感染し、3〜7日程度症状が続きます。白色の水様便が特徴で、脱水症状に注意が必要です。
アデノウイルス
3〜5日程度症状が続き、発熱を伴うことが多いです。
カンピロバクター菌
細菌性の代表で、潜伏期間は2〜5日、発症後は数日〜1週間程度症状が続きます。鶏肉の生食や加熱不足が主な原因です。ギラン・バレー症候群や反応性関節炎といった合併症が起こることがあるので、鶏肉はしっかりと加熱調理することが大切です。
サルモネラ菌
3〜7日程度症状が続き、高熱を伴うことがあります。卵や食肉からの感染が多いです。
症状の経過としては、多くの場合、突然の吐き気や嘔吐から始まり、その後下痢が続きます。発熱は人によって異なりますが、38度前後の熱が出ることもあります。嘔吐は通常1〜2日で治まることが多いですが、下痢は数日から1週間程度続くこともあります。
回復を早めるために大切なのは、無理をせず十分な休養を取ることです。また、脱水症状を防ぐために、少量ずつでも水分補給を続けることが重要です。固形物を食べられるようになったら、消化に良いものから少しずつ食べ始めましょう。
ただし、以下のような場合は回復が遅れたり、重症化したりする可能性があるため、早めに医療機関を受診してください。
- 48時間以上経っても症状が改善しない、または悪化している
- 水分が全く取れない状態が続く
- 血便や黒色便が出る
治ったらうつらない?
下痢や嘔吐などの症状が治まっても、すぐに感染力がなくなるわけではありません。ノロウイルスなどのウイルス性胃腸炎では、症状消失後も数日間は便中にウイルスが排出され、周囲にうつす可能性があります。そのため、症状がある間は無理をせず職場や学校を休み、少なくとも症状が治まってからも一定期間は登校・出勤を控えることが勧められます。再開の目安は施設の規定や医師の指示に従いましょう。
感染性胃腸炎の症状は?受診の目安
感染性胃腸炎では、激しい嘔吐や下痢が主な症状として現れます。原因となるウイルスや細菌によって症状の強さや期間は異なりますが、多くの場合は突然発症し、急激に症状が悪化します。
具体的な症状は以下の通りです。
消化器症状
激しい嘔吐や吐き気、水様性の下痢(1日に何度もトイレに行く)、強い腹痛や腹部の痙攣、胃の不快感や胃痛などが現れます。ノロウイルスの場合は特に嘔吐が激しく、ロタウイルスでは白っぽい水様便が特徴的です。
全身症状
38度前後の発熱、悪寒、倦怠感、筋肉痛、頭痛などを伴うことがあります。細菌性の場合は高熱が出やすい傾向があります。
その他の症状
食欲不振、脱水による口の渇きやめまい、血便(細菌性の場合に多い)、白色便(ロタウイルスやアデノウイルスの場合)などが見られることもあります。
脱水症状のサイン
嘔吐や下痢で大量の水分と電解質が失われるため、以下のような脱水のサインが出たら早めに受診してください。
- 口や唇が乾燥している
- 尿の量が極端に少ない、または色が濃い
- 皮膚の張りがなくなる
すぐに受診すべき症状
以下の症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。特に乳幼児や高齢者、持病のある方は重症化しやすいため、症状が軽くても早めの受診をおすすめします。
- 水分が全く取れない状態が続く
- 激しい嘔吐や下痢が止まらない
- 血便や黒色便が出る
感染性胃腸炎の原因は?細菌とウイルスの違い
感染性胃腸炎の原因は主に「ウイルス性」と「細菌性」ですが、まれに寄生虫が原因となることもあります。それぞれ感染経路や流行時期が異なります。原因を知ることで、適切な対処法や予防策を取ることができます。
ウイルス性胃腸炎の特徴
主に冬場に流行し、人から人へ感染が広がりやすいのが特徴です。
ノロウイルス
11月から3月頃に流行のピークを迎えます。感染力が非常に強く、わずか数十個のウイルスでも感染が成立します。感染者の糞便や嘔吐物を介して人から人へ広がるほか、感染者が調理した食品や、ウイルスに汚染された二枚貝(カキなど)を食べることでも感染します。
ロタウイルス
主に乳幼児に感染し、冬から春にかけて流行します。白色の水様便が特徴的で、脱水症状を起こしやすいため注意が必要です。現在はワクチンがあり、定期接種で予防できます。
アデノウイルス
年間を通じて発生しますが、夏場にやや多い傾向があります。発熱を伴うことが多く、便が白っぽくなることがあります。
細菌性胃腸炎の特徴
主に食べ物を介して感染し、いわゆる食中毒の原因となります。夏場に多く発生する傾向があります。
カンピロバクター菌
鶏肉の生食や加熱不足が主な原因で、夏場に多く発生します。潜伏期間が2〜5日と比較的長いのが特徴です。キャンプでのバーベキューや焼き鳥の生焼けなどで感染するケースが多く見られます。
サルモネラ菌
卵や食肉、特に夏場の食品管理が不十分な場合に感染します。高熱を伴うことが多く、症状は比較的重くなりやすいです。生卵や半熟卵、鶏肉料理が原因となることがあります。
病原性大腸菌(O157など)
牛肉や生野菜などから感染し、激しい腹痛や血便を引き起こします。溶血性尿毒症症候群(HUS)などの重篤な合併症を起こすこともあるため、特に注意が必要です。
腸炎ビブリオ
夏場に海産物(特に魚介類の刺身)から感染します。激しい腹痛と水様性下痢が特徴です。塩分を好む菌のため、真水でよく洗うことが予防につながります。
感染以外の原因による胃腸炎
食物アレルギー、暴飲暴食、ストレス、薬剤の副作用、血流障害による虚血性腸炎などが該当します。これらは感染性ではないため、人にうつることはありません。高齢者では腸への血流が悪くなることで起こる虚血性腸炎にも注意が必要です。
治療方法と自宅でできる対処法
感染性胃腸炎の治療は、体が病原体を自然に排出するのを待ちながら、症状を和らげることが基本です。特効薬はありませんが、適切な対処で症状を軽減し、回復を早めることができます。
医療機関での治療と自宅療養のポイント
医療機関での治療
当院では、患者さまの症状や周囲の発生状況、最近の食事内容などを詳しく伺い、原因となるウイルスや細菌を予測します。必要に応じて便検査を行うこともあります。
嘔吐や下痢は、体が病原体を体外に排出しようとする防御反応のため、むやみに止めるべきではありません。そのため、以下のような対症療法が中心となります。
- 整腸剤で腸内環境を整える
- 吐き気止めで嘔吐による体力消耗を抑える
- 解熱剤で高熱による負担を軽減する
来院時に脱水症状が見られる場合は、点滴治療を行います。経口での水分補給が難しい場合や、脱水が進んでいる場合には、点滴で直接水分と電解質を補給することが効果的です。
自宅療養のポイント
自宅での水分補給のコツ
最も重要なのは、脱水症状を防ぐことです。経口補水液(OS-1など)が最適ですが、スポーツドリンクでも構いません。ただし、スポーツドリンクは糖分が多いため2倍程度に薄めると良いでしょう。
自宅での水分補給のコツ
最も重要なのは、脱水症状を防ぐことです。経口補水液(OS-1など)が最適ですが、スポーツドリンクでも構いません。ただし、スポーツドリンクは糖分が多いため2倍程度に薄めると良いでしょう。
一度に大量に飲むと嘔吐を誘発するため、スプーン1杯程度から始め、5〜10分おきに少しずつ飲むことがポイントです。吐き気が強い場合は、氷を少しずつ舐めるだけでも効果があります。
食事の再開方法
症状が激しい間は無理に食べる必要はありません。嘔吐が治まり、食欲が出てきたら、以下のような消化に良いものを少量ずつ食べ始めましょう。
- お粥(重湯から始めて徐々に固くする)
- うどん(やわらかく煮たもの)
- バナナ
脂っこいもの、刺激の強いもの、乳製品、食物繊維の多いものは避けてください。また、柑橘類や炭酸飲料も胃を刺激するため控えましょう。
十分な休養
体力の回復のために、十分な休養を取りましょう。無理に動くと症状が悪化したり、回復が遅れたりします。仕事や家事は周囲に協力を求め、しっかり休むことを優先してください。
家族に感染者が出たときの対処法
感染者が出た場合は、家庭内での二次感染を防ぐことが重要です。タオルや食器の共用は避け、感染者のものは分けて管理しましょう。
環境の消毒方法
感染者が触れたドアノブ、手すり、トイレなどは、次亜塩素酸ナトリウム(家庭用塩素系漂白剤を200倍に薄めたもの)で消毒します。アルコールはノロウイルスには効果が薄いため、必ず塩素系消毒剤を使用しましょう。
トイレは便座やレバー、ドアノブなど手が触れる場所を重点的に消毒し、1日に数回行うことが理想的です。
嘔吐物・排泄物の処理方法
感染者の嘔吐物や糞便を処理する際は、使い捨て手袋とマスクを必ず着用します。嘔吐物はペーパータオルなどで外側から内側に向かって静かに拭き取り、ビニール袋に密閉して廃棄します。処理後の床は次亜塩素酸ナトリウムで消毒しましょう。嘔吐物が飛び散った範囲は思ったより広いため、半径2メートル程度を目安に消毒することをおすすめします。
衣類に嘔吐物や便が付着した場合は、他の洗濯物と分けて洗います。85度以上の熱水に1分以上浸けるか、次亜塩素酸ナトリウムで消毒してから洗濯してください。
感染性胃腸炎を予防するには?
感染性胃腸炎の予防には、日常的な手洗いと食品の適切な管理が最も効果的です。特にウイルス性の場合、アルコール消毒だけでは不十分なため、石けんを使った手洗いが重要です。
効果的な手洗いの方法
帰宅時、食事前、トイレ後、調理前後には、必ず石けんで30秒以上かけて丁寧に手を洗います。指の間、爪の間、手首まで忘れずに洗いましょう。ノロウイルスはアルコールが効かないため、手洗いが最も確実な予防法です。
食品管理のポイント
生肉や魚介類は十分に加熱します。特に二枚貝は、中心温度85〜90度で90秒以上に、中までしっかり火を通しましょう。いずれの食材も半生の状態ではウイルスが死滅しません。
調理器具(包丁、まな板)は肉・魚用と野菜用で分け、使用後は熱湯消毒します。同じまな板で生肉を切った後に野菜を切ると、交差汚染の原因になります。
卵は新鮮なものを選び、ひび割れたものは使用しません。生卵や半熟卵を食べる場合は、賞味期限内のものを使用してください。
日常生活での注意点
体調が悪い時は調理を控えましょう。特に食品を扱う仕事の方は、下痢や嘔吐の症状がある間は必ず休んでください。免疫力を高めるために、日頃から十分な睡眠とバランスの良い食事を心がけることも大切です。
当院では、感染性胃腸炎の症状でお困りの方に、適切な診断と治療を提供しています。激しい嘔吐や下痢、脱水症状が心配な方、何日も症状が続いて不安な方は、どうぞお気軽にご相談ください。早期の受診が、回復への近道です。