睡眠と仕事の生産性の関係は?産業医を活用した対策

2022.11.30 産業保健

睡眠不足で仕事の生産性が低下する?

 寝不足の日はなんとなく仕事に身が入らない。ミスが多い気がする。そんな経験がある方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?実際に多くの研究結果から、睡眠と仕事の生産性には関わりがあることが証明されています。

 ペンシルベニア大学とワシントン大学にて、次のような実験が行われました。睡眠時間を4時間、6時間、8時間の3つのグループに分け、14日間連続して同じ睡眠時間を維持し、起きているときの身体的、及び精神的なパフォーマンスをモニタリングしました。この実験からは、慢性的に1晩あたりの睡眠時間を6時間以下に制限すると、2日間睡眠をとっていない状態に相当する認知機能の低下が生じるという結果が得られたとのことです。(※1)

 さらに、アメリカ・ランド研究所の推計では、睡眠不足で日本のGDPは2.9%損なわれている可能性があり、その損失額は最大で15兆円にものぼると試算されています。(※2)

 このように、睡眠不足は個人だけの問題ではなく、企業にとっても生産性にかかわる重大な問題であると言えるでしょう。
 そこで今回は、働く方々の睡眠不足に対し、企業の産業医や保健師を活用したアプローチをご紹介します。

 

産業医、保健師による睡眠サポート

<企業へのサポート>

 従業員がより良い睡眠環境を得られるよう、職場環境についての改善アドバイスや健康教育を行います。たとえば交代勤務がある職場の場合、勤務間インターバルが十分取れているか、仮眠の時間や環境の確保について、検討しアドバイスを行います。
 こうした取り組みで企業全体の睡眠リテラシーが高まると、従業員が自発的に睡眠改善に取り組んだり、睡眠不足による体調不良やメンタルヘルス不調の前兆をキャッチできるような環境づくりに繋がります。

<本人へのサポート>

 本人に対しては、面談を通じてサポートを行います。生活や睡眠の状況についてヒアリングし、家庭での睡眠環境の整え方や、寝付きが良くなるような日中の過ごし方のアドバイスを行います。
 また、本人の工夫だけでは睡眠改善が難しい場合や、うつ病などを含む深刻な状況に発展する可能性が高い状態と判断した場合は、医療機関の紹介を行います。主な診療科の候補としては内科、精神科、心療内科などがあり、最近では「睡眠外来」という睡眠を専門とする診療科も存在します。

 面談では上記のような本人への睡眠衛生指導を基本としていますが、仕事の中に原因がある(長時間労働等)と思われる場合は、どう対処すれば良いか一緒に考えつつ、企業側にも本人の負担を緩和できるように残業調整等を呼びかけるといった対応を行うこともあります。仕事が原因となっている場合、本人が上司には言い出しづらいなどの理由から原因が発覚しづらいケースもありますが、産業医や保健師が間に入ることで、率直なフィードバックを受けることができるのは大きなメリットといえます。

 睡眠の悩みは一人で溜め込まず、誰かに相談することが重要です。特に、産業医や保健師のような睡眠衛生のプロによる面談では、生活指導や、職場環境改善について具体的なアドバイスをもらうことが出来るので、改善に向かいやすくなります。

 

参考文件:
(※1)Hans P A Van Dongen , Greg Maislin, Janet M Mullington, David F Dinges「The cumulative cost of additional wakefulness: dose-response effects on neurobehavioral functions and sleep physiology from chronic sleep restriction and total sleep deprivation」
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12683469/
(※2)Marco Hafner, Martin Stepanek, Jirka Taylor, Wendy M. Troxel, Christian Van Stolk「Why sleep matters — the economic costs of insufficient sleep」
https://doi.org/10.7249/RR1791

東京桜十字が提供する睡眠サポート

東京桜十字の産業保健サービスでは、睡眠のご相談に対しても対応が可能です 。 上述したような産業医や保健師など専門職によるアドバイスや、専門診療科への受診勧奨の他、企業として従業員の睡眠状況を把握したい場合、睡眠に関する項目までカバーしているストレスチェックシステムをご紹介できます。 まずは良い睡眠が取れているかどうかの気付きのために、さらに改善に向けた支援のためにも、お困りのことああればお気軽にお問い合わせください。