初めてで不安?バリウム検査の流れと受診のコツをやさしく解説

初めてのバリウム検査で感じる不安の正体、それは「よくわからない」ことへの恐れからでしょう。「検査中ゲップを我慢できるか心配」「検査後に便が出にくくなると聞いて不安」「検査中に気分が悪くなったらどうしよう」などなど——。
こうした不安の多くは、検査について具体的にイメージできないことから生まれています。しかし、検査の流れやコツを事前に理解しておけば、初めての方でもスムーズに受けられます。
この記事では、初めてバリウム検査を受ける方が安心して検査に臨めるよう、検査の流れや、スムーズに検査を受けられるコツ、そして検査後の対処法までを詳しく解説します。
バリウム検査は怖い?辛い?その実際とは
多くの方が不安に感じる「ゲップの我慢」「バリウムの味や量」「検査後の便秘」——これらは確かにバリウム検査特有の体験です。 しかし、「辛い」と感じるかどうかは、事前準備と当日の対処法を知っているかどうかで変えることができます。実際、初めての方でも検査の流れと適切に受けるコツを知ることで、スムーズに検査を受けられています。
では、具体的にどのような検査で、どのような流れで実施されるのでしょうか。まずはバリウム検査の目的と仕組みから理解していきましょう。
バリウム検査とは?なぜ必要なのか
バリウム検査の仕組み
バリウム検査は正式には「上部消化管X線検査」と呼ばれ、胃や食道の状態をX線撮影で調べる検査です。バリウム(造影剤)を飲むことで、通常のX線では見えにくい胃の粘膜や形状の変化を映し出し、異常がないかを確認します。
検査時には発泡剤も飲みます。これは胃を膨らませることで、胃壁の細かいヒダまで観察しやすくするためです。この発泡剤によって生じる「ゲップを我慢する」ということが、多くの方に不安を感じさせる1つのポイントとなっています。
なぜバリウム検査が重要なのか
2021年の統計によると、日本では年間約11万人が胃がんと診断されており1)、早期発見・早期治療が非常に重要です。バリウム検査は胃がんだけでなく、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、ポリープなどの病変の発見にも役立ちます2)。
特に初期の胃がんは自覚症状がほとんどありません。定期的な検査によって、病状が進行して症状が出る前に異常を見つけることで、治療の選択肢が広がり、治癒率の向上が期待できます1)。
内視鏡検査との違い
胃の検査には内視鏡検査(胃カメラ)もあります。内視鏡は胃の中を直接観察でき、より詳細な診断が可能ですが、バリウム検査には以下のメリットがあります。
- 検査後の安静が不要ですぐに帰宅できる(内視鏡検査で鎮静剤を使用する場合は30分程度の安静が必要)
- ・胃全体の形状変化を把握しやすい
一方で、バリウム検査で異常が見つかった場合は、精密検査として内視鏡検査が必要になります。それぞれの検査には特徴があり、状況に応じて使い分けられています。
―監修医師コメント
戦後の日本は結核大国で、1950年代前半から肺結核の集団検診が広く普及しました。しかし1950年代後半に肺結核患者は減少し、替わってがんでの死亡者数が増加し始めたため国民的にがん対策の気運が高まりました。臓器別では「胃がん」が最多であったことから、1950年代後半から既存の結核検診を応用する形で試験的に「胃集団検診」がバリウムを用いて行われ、1962年の国立がんセンター開院と消化器胃集団検診学会(現在の消化器集団検診学会)の設立、さらに同時期に日本独自の「消化管二重造影法」という優れた撮影法が普及し、まさに政策と学術そして技術が一体となる形で、世界に類を見ない「国民の死亡リスクを下げる集団検診」としてバリウム検査が定着してゆきました。ちなみに日本以外でバリウムによる胃がん検診を行っている国は韓国だけで、2015年以降は内視鏡検診が主流になってきています。日本は1983年2月に現在の「高齢者医療確保法」でバリウムによる胃がん検診が法制化され、国民の努力義務として50歳以上に2年に1回行われていますが、法的には胃カメラでも良いことになっています。
前向きに検査を受けるために
初めてでも大丈夫な理由
バリウム検査は、日本全国で年間数百万人が受けている標準的な検査です。医療技術の進歩により、バリウムの味も改良され、検査機器も進化しています。
バリウム検査受診のメリット
| 早期発見の可能性 | 自覚症状のない段階で病変を見つけられる |
| 安心感 | 異常がなければ、胃が健康であることを確認できる |
| 治療の選択肢 | 早期であれば、負担の少ない治療が可能 |
| 家族の安心 | 自分の健康を守ることは、大切な人の安心にもつながる |
より快適に検査を受けるために
東京桜十字のクリニックでは、初めての方でも安心して検査を受けられるよう、丁寧な説明とサポート体制で受診者の皆さまをお迎えしています。検査前の不安や疑問があれば、遠慮なくスタッフにお伝えください。
また、バリウム検査以外にも、内視鏡検査(胃カメラ)や人間ドックなど、さまざまな健康診断メニューをご用意しています。ご自身の年齢や健康状態、不安の内容に応じて、最適な検査方法を選ぶことができます。
検査当日の流れとスムーズに検査を受けるコツ
前日の準備で検査をスムーズに
バリウム検査をスムーズに受けるためには、前日の準備が重要です。胃の中に食べ物が残っていると、正確な診断ができないだけでなく、病変と誤診されたり、検査がやり直しになる可能性もあります3)。
前日の過ごし方のポイント
- 夕食は消化の良いものを選び、少なめに留める
- 早め(できれば20時まで)に済ませる
- アルコールは控えめにする(施設によっては禁止の指示がある場合も)
- 十分な睡眠をとる
当日朝の注意点
検査当日の朝は、一切の食物を口に入れてはいけません。水分摂取については施設により指示が異なりますが、多くの場合「検査2時間前まで少量の水分は可」とされています。受診する施設の指示に従いましょう。
タバコは控えましょう。喫煙により胃液の分泌が促進され、バリウムが胃壁に付着しにくくなる可能性があります。ガムや飴も同様の理由で避けてください。
薬を服用している方は、事前に医師に相談し、指示に従いましょう。特に糖尿病薬や降圧薬などは、服用の可否や検査のための絶食について医師の判断が必要です。
検査の流れ
バリウム検査は、以下のような流れで進みます。
ステップ1:発泡剤を飲む
最初に発泡剤(顆粒状または液体)を少量の水で飲みます。これが胃の中で炭酸ガスを発生させ、胃を膨らませます。
ゲップを我慢するのが「辛い」と感じる方もいますが、我慢するのは数分程度です。多くの方が「思ったより我慢できた」という感想を持たれています。
ステップ2:バリウムを飲む
次にバリウム(白い液体)を小分けに飲みます。量は150〜200ml程度で、味はヨーグルト風味など、施設によって異なります。
初めての方は「飲めるだろうか」と不安に感じるかもしれませんが、最近のバリウムは以前に比べ飲みやすく改良されています。一気に飲むのではなく、技師の指示に従って少しずつ飲むのがコツです。
ステップ3:体位変換とX線撮影
検査台の上で、技師の指示に従って体の向きを変えながらX線撮影を行います。仰向け、うつ伏せ、左右を向くなど、さまざまな角度から胃を撮影します。
この体位変換は、バリウムを胃全体に行き渡らせ、全ての部位を観察するために必要です。検査台が傾いたり回転したりしますが、技師がしっかりサポートしてくれるので安心してください。めまいを感じやすい方は、事前に伝えておくとよいでしょう。所要時間は10~15分です。
よくあるトラブルと対処法
| ゲップが出てしまった場合 | もしゲップが出てしまっても、落ち着いて技師に伝えましょう。場合によっては発泡剤を追加して検査を続行できることもあります。 |
| 気分が悪くなった場合 | 検査中に気分が悪くなったら、無理せずすぐに技師に伝えてください。一時的に検査を中断し、体調が回復してから再開することができます。 |
| バリウムが飲みにくい場合 | 飲み込むのが辛い場合は、ストローを使ったり、少しずつ飲んだりする工夫ができます。技師に相談してみましょう。 |
検査後の過ごし方と便通対策
バリウム排出の重要性と医療機関受診の目安
バリウムは体内に吸収されない物質です。バリウムが腸内に長く留まると、バリウム内の水分が腸に吸収されて硬くなるので、検査後はできるだけ速やかに体外へ排出する必要があります。非常にまれですが検査後の腸穿孔や腸閉塞のリスクが報告されている4)ため、腹痛などがある場合は早めに対策を行いましょう。
多くの方が「普段より便が出にくい」と感じますが、適切な対処法を知っておけば心配ありません。水分を普段より多めに摂り、検査後48時間以上全く排便がない場合は、医療機関に相談しましょう。
バリウムを出すために検査直後にすべき2つのこと
| 下剤を服用する | 検査後、ほとんどの施設で下剤が渡されます。これは必ず指示通りに服用してください。下剤にはバリウムの排出を促す重要な役割があります。 |
| 水分を積極的に摂る | 検査後は、いつもより多めに水分を摂取しましょう。目安は2リットル程度です。水分摂取により、バリウムが柔らかくなり、排出されやすくなります。 お茶や水がおすすめですが、カフェインの多いコーヒーや利尿作用のあるアルコールは避けた方が無難です。 |
白い便はいつまで出る?
バリウムを飲んだ後の便は、白色または灰白色になります。びっくりする方もいらっしゃいますが、正常な反応なので心配しないでください。個人差はありますが、通常1〜3日程度で白い便が出なくなれば、バリウムはほぼ排出されたと考えられます。
便の回数や量には個人差がありますが、白い便が出なくなるまで、水分の多め摂取や下剤の追加服用を続けることが大切です。
便秘対策のポイント
バリウム検査後の便秘を防ぐには、以下の生活習慣上の対策も有効です。
| 食物繊維を摂る | 野菜、果物、海藻類などを意識的に食べる |
| 適度な運動 | 軽いウォーキングや腹部マッサージで腸の動きを促す |
| 規則正しい生活 | トイレに行く時間を決めるなど、排便リズムを整える |
| 無理に力まない | 便意がなくても、こまめにトイレに座ってみる |
こんな症状があれば医療機関へ
以下のような症状が現れた場合は、速やかに検査を受けた施設に連絡してください。
医療機関を受診すべき症状
- 2日以上便が出ない
- 腹痛がある(歩くだけで響くような痛みなど)
- お腹の張りが強い(腹部膨満感が続く)
- 吐き気や嘔吐が続く
- 発熱がある
- 皮膚に発疹やかゆみが出る(アレルギー反応の可能性)
これらの症状が出た場合、腸閉塞や腸穿孔、アレルギー反応などの合併症の可能性もあります。特に便秘に腹痛を伴う場合は腸閉塞の初期である可能性もあり、我慢せず早めに相談や受診をしてください。
―監修医師コメント
消化器がん検診学会の「2020年度胃がん検診偶発症アンケート調査」によると、バリウム検査による偶発症の発生頻度は、調査された318万4,128人中、全体として1,105件で、対10万人あたり34.7人でした。内視鏡検診の偶発症は、対10万人あたり178.8人なのでバリウム1/5でした。すなわち、バリウムが安全性では内視鏡に勝ることが示されます。その偶発症の内訳では、誤嚥が907件(28.5/10万件)、過敏症状=アレルギーが9 件(0.28/10万件)、腸閉塞が4 件(0.13/10万件)、腸管穿孔が6 件(0.19/10万件)とされています。しかしいずれも軽微で、入院が必要となったヒトは2 件(0.063/10万件)のみ、死亡例および訴訟例は無かったとしています。
傾向としてバリウム誤嚥は、高齢男性に多く、3 年連続増加していたとのことです(2017年度683件:16.605/10 万件,2018年度796件:24.344/10万件,2019年度858件:29.606/10万件)。しかし殆どは発熱もなく、外来受診を必要としたのは907人中38人だったそうです。便が排出されない腸閉塞は 4 件で、2019年より減少していました(2019年度 7 件)。腸管穿孔6例は全て高齢女性だったそうで、人工肛門に至った例もあったと記載されています。本レポートでは「高齢者では日常的なむせ込みや排便状況などの問診が不十分になることや,検査後の水分摂取が不十分,下剤の飲み忘れ等も起こることがあり,注意が必要である。」としています。このコラムに記されている、事前、事後の注意を周知すれば、確実にリスクを下げることが出来ます。
検査後のフォローアップ
検査結果に異常があった場合でも、早期発見であれば治療の選択肢は広がります。東京桜十字では、検査後のフォローアップ体制も充実しており、必要に応じて専門医による精密検査や治療のご案内が可能です。
検査は受けて終わりではありません。結果をしっかり確認し、必要なら速やかに次のステップへ進むことが大切です。
―監修医師コメント
胃がんが永年にわたってがん死亡の1位を占めていた原因に、日本人のピロリ菌感染率の高さがありました。また胃がんは、ピロリ菌感染が少ない東欧諸国にも患者が多く、日本との共通点として「塩蔵食品を多く摂取する」ことが原因とされています。その他、喫煙やストレスなど胃がんへのリスクを知って遠ざけることがまず必要です。
しかしながら現在は、「2人に1人がガンになってしまう時代」です。「自分だけは大丈夫」と思わず検査を受けて、がんが無いことの確認、あるいは早期のうちに除去することが最も重要といえます。胃がんの早期=ステージ1の5年生存率は様々な統計でも90%を越えています。「病(やまい)恐れて、検査恐れず」この姿勢で、安全なバリウム検査、ぜひ受けて下さい。
まとめ:健康を守る第一歩としてバリウム検査を受けましょう
初めてのバリウム検査には、だれでも不安を感じるものです。しかし、事前準備をしっかり行い、検査の流れとコツを理解しておけば、スムーズに検査を受けられることがほとんどです。スムーズに検査を受けるためのポイントをおさらいしましょう。
スムーズにバリウム検査を受けるためのポイント
- 前日は消化の良い食事を早めに済ませる
- 発泡剤後のゲップを数分間我慢する(飲み込む動作、顎を上げる)
- 検査中は技師の指示に従ってリラックス
- 検査後は水分摂取と下剤服用をしっかりと
バリウム検査は、あなたの健康を守るための大切な検査です。初めての経験は誰でも緊張するものですが、この検査が将来の大きな病気を防ぐ可能性があることを思い出してください。
もし検査について不安なことや疑問があれば、東京桜十字のスタッフまでお気軽にご相談ください。皆さまが安心して検査を受けられるようサポートいたします。
参考文献
1)国立がん研究センターがん情報サービス「がん種別統計情報 胃」https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/5_stomach.html
2)日本消化器内視鏡学会「(1)造影検査と内視鏡検査の違い(総論)」https://www.jges.net/citizen/faq/general_02
3)日本人間ドック・予防医療学会「上部消化管X線」https://www.ningen-dock.jp/inspection_alimentary-x/
4)独立行政法人日本医薬品医療機器総合機構「医薬品・医療機器等安全性情報 No.219」
https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/calling-attention/safety-info/0052.html
監修者情報
監修:
東海大学ウェルビーイング研究所 所長、特任教授
Sakura Well-being健康医科学寄付講座 代表
日本総合健診医学会 理事長.国際健診学会(IHEPA)理事長
桜十字六本木ヒルズクリニック 予防医療センター長
西﨑 泰弘
執筆:
メディカルトリビューン編集部