マンモグラフィ検査とは? 乳がん検診での目的・流れ・痛み・被ばくリスクを徹底解説

「マンモグラフィ検査を受けるように言われたけど、やっぱり痛いの?」「被ばくも心配だし、本当に必要なの?」そんな不安を抱えていませんか。
マンモグラフィは、乳がん検診の早期発見において、非常に重要な役割を果たす画像検査の一つです。痛みや被ばくへの懸念を持つ人もいますが、正しい知識を持つことで安心して検査を受けることができます。
この記事では、マンモグラフィ検査の目的・流れ・痛みの軽減方法・放射線被ばくのリスク・エコー検査との違いについて詳しく解説します。
マンモグラフィ検査とは? 乳がん検診で使われる画像検査の特徴
マンモグラフィの定義と特徴
マンモグラフィとは、乳房専用のX線撮影装置を使用した検査のことです。乳房を透明なプラスチック板で挟んで圧迫し、X線を照射することで乳房内部の構造を画像として映し出します。
この検査の最大の特徴は、触診では発見できない小さなしこりや石灰化病変を発見できることです。特に5mm以下の微小な病変も描出できるため、乳がんの早期発見において欠かせない検査となっています。
マンモグラフィで発見できる病変
マンモグラフィでは以下のような病変を発見することができます
- 腫瘤: しこりとして現れる病変
- 石灰化: カルシウムが沈着した微細な点状の影
- 構築の乱れ: 正常な乳腺や乳管の構造が崩れている状態
- 非対称性陰影: 左右の乳房で乳腺密度に違いがある状態
マンモグラフィは石灰化病変の発見に特に優れており、これは乳がんの早期兆候として重要な所見です。エコー検査では見つけにくい病変も発見できるため、両方の検査を組み合わせることで、より確実な診断が可能になります。
乳腺は哺乳類特有の器官であり、男性にも存在します。男性は痕跡程度ですが、実際の機能を担う女性の乳腺と乳管は、乳がんのみならず乳腺症など生涯のうちにトラブルが多発しやすい器官といえます。
前述のように、女性における乳がんは、がん罹患率の第1位ですが、死亡率では第5位に順位を下げます。これは「戦って勝てる可能性」を物語っており、マンモグラフィなどの検査を受けることがリスクを遠ざける最も有効な手段といえます。好発年齢は40~50代前半で、好発部位は外側の上側、すなわち脇の下から乳頭を結んだエリアですが、逆に半分がそれ以外に発生するため全体の検査が必要となります。
本邦における法定の乳がん検診では、前記のようにマンモグラフィが推奨されています。これは乳房に多く含まれる脂肪(黒色調)とがん(白色調)のコントラストが付きやすいことを利用しています。対象年齢の方々には、地方自治体から受診券が送られてきます。補助金も設定されていますので、ぜひ前記を参考に多くの方に受けていただきたいと思います。
―監修医コメント
マンモグラフィ検査の目的と乳がん検診での役割
乳がん検診における重要性
日本では、乳がんは女性のがん罹患率第1位を占めており、2020年度においては年間約9万人が新たに診断されました1)。しかし、早期に発見できれば90%以上の確率で治癒が期待できる疾患でもあります。
マンモグラフィ検査の主な目的
- 早期がんの発見:症状が出る前の微小ながんを発見
- 早期がんの発見:症状が出る前の微小ながんを発見 ・定期的な経過観察:過去の画像と比較して変化を確認
- 症状がある場合の精密検査:しこりや分泌物がある際の詳細な評価
年代別の推奨頻度
厚生労働省のがん検診指針では、40歳以上の女性に対して2年に1回のマンモグラフィ検査を推奨しています2)。これは国際的にも標準的な検診間隔とされており、科学的根拠に基づいた推奨です。
※年代推奨頻度特記事項
- 30代 症状がある場合のみ乳腺密度が高いため、エコーが第一選択
- 40代以上 2年に1回マンモグラフィ+必要に応じてエコー併用
- 家族歴あり 医師と相談の上、より若い年齢から検診開始を検討
マンモグラフィ検査の流れと所要時間
検査前の準備
検査を受ける際は、以下の準備が必要です。
服装について
- 上半身は脱ぎやすい服装を選ぶ
- ワンピースよりもセパレートタイプが便利
- アクセサリーは事前に外しておく
検査に適したタイミング
- 乳房の張りが少なく、痛みを感じにくい、ホルモンの影響で乳腺密度の変化が少ないといった理由から、生理開始から1週間後が最適です。
検査当日の流れ
- 受付・問診:症状や既往歴について確認
- 着替え:専用の検査着に着替え
- 撮影準備:技師による体位の調整
- 撮影実施:各方向から2〜4枚撮影
- 所要時間:約10〜15分で終了
マンモグラフィ撮影体位の種類:マンモグラフィでは通常、以下の2方向から撮影を行います
- CC撮影(頭尾方向): 乳房を上下から挟んで撮影
- MLO撮影(内外斜位方向): 乳房を斜めに挟んで撮影
- ―それぞれの撮影で約5〜10秒間の圧迫が必要となります。
撮影時の圧迫は確かに不快感を伴いますが、乳腺組織を均一に広げることで、より鮮明な画像を得ることができます。また、圧迫により被ばく線量の軽減にもつながるため、必要な処置となります。
今から約10年前、米国俳優のアンジェリーナ・ジョリーさんは、家族に乳がん死亡者が多かったことから遺伝子検査を受けました。そして「BRCA1」という遺伝子の変異がある事が発見され、乳がんリスク87%、卵巣がんリスク50%と診断されたため、2013年、がんになっていない健康な両側乳房を切除し再建手術を受けました。同様に2015年、卵巣がんリスクを下げる目的で卵巣と卵管を摘出し、世界的な話題になりました。
このように家族歴は大変重要なリスク情報です。また肥満、アルコール、経口避妊薬、閉経後の女性ホルモン補充療法、未出産、そして良性疾患である乳腺症経験者もリスク群に含まれることが知られています。
―監修医コメント
マンモグラフィ検査の痛みはどのくらい? 痛みを軽減する方法
マンモグラフィ検査で痛みを感じる理由
- 圧迫による物理的な痛み:乳房を平たく伸ばすための圧迫
- 感受性の個人差:痛みの感じ方には大きな個人差がある
- 乳腺の状態:乳腺密度が高い方や炎症がある場合は痛みが強くなる
マンモグラフィ検査の痛みを軽減する方法
検査前の準備
- 生理前1週間は避ける(乳房の張りが強いため)
- カフェインを控える(乳房の張りを増強する可能性)
- リラックスした状態で臨む
検査中の対処法
- 深呼吸をして筋肉の緊張をほぐす
- 撮影時間が短いことを理解する
- 技師とのコミュニケーションを積極的に取る
マンモグラフィでの放射線被ばくに対する正しい理解
マンモグラフィ検査における放射線被ばく量は1回あたり約0.1~0.5mSv。胸部X線(約0.05mSv)と比較すると高めですが、この量は自然放射線(年間約2.4mSv)の1/5以下。これは医学的に安全とされる範囲内の被ばく量であり、検査の利益が被ばくのリスクを大幅に上回ります。
マンモグラフィと乳腺エコーの違いと併用のメリット
マンモグラフィとエコーの特徴を比較!
マンモグラフィとエコー検査にはそれぞれ異なる特徴があり、単独では発見できない病変も組み合わせることで発見率が大幅に向上します。「マンモグラフィかエコー、どっちかだけでよいのでは?」そんな風に思っている人も多いかもしれませんが、マンモグラフィとエコーの違いを知って、それぞれのメリットを把握しておきましょう。
関連記事:乳がん検診はマンモグラフィと乳腺エコーのどちらを受けるべき? | 東京桜十字
年代別の推奨
- 40歳未満:エコー中心、必要に応じてマンモグラフィ追加
- 40歳以上:マンモグラフィ+エコーの併用検診
- 高リスク群:より頻回な併用検診を検討
桜十字グループのクリニックでの検査について
桜十字健診センターでは、女性が安心して検査を受けられるよう、以下のような配慮をしています。
・女性技師による撮影: プライバシーに配慮した検査環境
・総合的な検診: マンモグラフィとエコーの併用検診が可能
検査結果については専門医による読影を行い、必要に応じて追加検査や治療方針について相談します。
ご予約はこちら⇒健康診断・人間ドック 予約フォーム | 東京桜十字
まとめ:定期検診で安心な毎日を
マンモグラフィ検査は、確かに痛みや放射線被ばくへの不安があります。しかし、乳がんの早期発見において極めて重要な検査であり、その利益は不安要素を大幅に上回ります。
この記事のポイント
- マンモグラフィは微小な病変や石灰化の発見に優れている
- 40歳以上は2年に1回の定期検診が推奨される
- マンモグラフィが痛いと感じるのは一時的で、適切な準備により軽減可能
- エコー検査との組み合わせでより確実な診断が可能
大切なのは、不安に思うことがあれば専門医に相談し、定期的な検診を継続することです。早期発見により、多くの方が健康な生活を続けることができています。
桜十字健診センターのオプション検査について詳しくは、お気軽にお問い合わせください。
牛乳にカルシウムが豊富なことは誰もが知っていると思います。実はウシの3~4分の1ほどですが、母乳にもカルシウムが豊富に含まれています。加齢とともに乳腺組織は脂肪に置き換わるのですが、これには個人差があります。乳腺組織が多く残っているヒトの場合、カルシウムによってX線が遮られ(白色調)、がん(白色調)が見えにくくなってしまいます。これを「高濃度乳腺」といい、撮影するまでは分かりません。
このため、特に30~40歳代では乳腺エコー検査との併用が推奨されています。マンモグラフィと乳腺エコー検査の組み合わせは、人間ドックのオプション検査で設定されています。検査費用は少し高めになりますが、マンモグラフィでがんが疑われた場合も、保険診療での超音波検査が行われ、形状や進展範囲(浸潤やリンパ節転移)の判定に有用な検査です。より高い精度での検査を望まれる場合はぜひ併用をおすすめします。
―監修医コメント
参考文献
記事監修
東海大学医学部健康管理学領域 主任教授/大学院医学研究科ライフケアセンターセンター長
日本総合健診医学会 理事長.国際健診学会(IHEPA)理事長
桜十字グループ 予防医療事業部 研究・教育・医療サービス開発担当 主管医師
西﨑 泰弘
執筆
メディカルトリビューン編集部