インフルエンザ予防接種は受けるべき? ワクチンの効果・費用・副反応・最適な接種時期を徹底解説

「インフルエンザの予防接種って本当に受ける意味があるの?」
「毎年受けているけれど、効果を実感できない…」
そんな疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。
インフルエンザは毎年多くのヒトが感染し、重症化すると命を落とすこともある感染症です。インフルエンザ予防接種(インフルエンザワクチン)は最も確実な予防策の一つですが、正しい知識を持って臨むことが大切です。
本記事では、インフルエンザ予防接種の効果や最適な接種時期、費用、副反応まで、わかりやすく解説します。
インフルエンザ予防接種とは?基本知識(効果と仕組み)
インフルエンザ予防接種(インフルエンザワクチン)は、インフルエンザウイルスに対する免疫を獲得し、感染の防御や重症化の予防を目的としています。
インフルエンザウイルスの特徴
インフルエンザウイルスは主にA型、B型、C型に分類されますが、C型は一度免疫を獲得すると二度と感染しないため、A型とB型が季節性インフルエンザの原因となります。(1) ウイルスは毎年変異するため、日本では国立健康危機管理研究機構(旧国立感染症研究所)で開催される『インフルエンザワクチン株選定のための検討会議』で検討され推奨株候補を決定して毎年新しいワクチンを製造しています。(2)
予防接種の仕組み
インフルエンザワクチンには不活化(感染性を失った)したインフルエンザウイルスが含まれており、体内に入れることで免疫システムがウイルスを認識し、抗体を作ります。接種後に抗体ができると、実際にインフルエンザウイルスに感染した際はこの抗体が迅速に働き、発病や重症化を防ぎます。
インフルエンザ予防接種は感染を防ぐものではありませんが、重症化リスクを大幅に軽減できる重要な予防策です。特に高齢者や基礎疾患のある方には強くおすすめしています。
インフルエンザの感染状況については、決められた感染症指定病院から保健所に集められた情報を元に作成される「定点観測」の数字で表現されます。これが1を超えた時に「感染は拡大している」と判断するのですが、令和7年第39週(9月22~ 28日)の定点当たり報告数が1.04となり、今年もインフルエンザが流行シーズンに入ったと判断されます。9月末まで猛暑日が続いていたにもかかわらず少し早い印象ですが、ぜひ早めのインフルエンザワクチン接種をおすすめします。
―監修医師コメント
インフルエンザ予防接種を受診するべき理由と効果、メリット
厚生労働省のデータによると、インフルエンザ予防接種には以下のような効果があります。(3)
インフルエンザワクチンの感染予防効果
健康な成人では、インフルエンザ予防接種により発病リスクを概ね50〜60%程度減少させることがわかっています。完全に感染を防ぐわけではありませんが、罹患したことが分からない程度に症状を抑える効果も含めて、発病率を下げる効果があります。
インフルエンザの重症化予防効果
予防接種の最も重要な効果はインフルエンザに罹った際の重症化の予防です。インフルエンザワクチンは高齢者の死亡率を約80%抑制することができるという研究結果も出ています。(3)
インフルエンザワクチンが及ぼす経済的メリット
インフルエンザ治療に対する医療費や、罹患により仕事を休むことで出る経済損失を考慮すると、インフルエンザ予防接種の費用対効果は非常に高いといえます。
インフルエンザ予防接種の時期と対象者
インフルエンザ予防接種のタイミング
インフルエンザ予防接種を受けるのに最適な時期は10月〜12月上旬です。その理由は以下の通りです:(3)
インフルエンザ予防接種を10~12月に受けるといい理由
- 免疫獲得までの期間:接種後約2〜4週間
- 流行時期:通常1〜3月
- 効果持続期間:約5〜6カ月
特にインフルエンザ予防接種を推奨される方とは?
以下にあてはまる方には、積極的な接種が推奨されます。
高リスク群の方
- 65歳以上の高齢者
- 慢性疾患をお持ちの方(糖尿病、心疾患、腎疾患、肺疾患など)
- 免疫機能が低下している方
- 妊娠中の女性
- 乳幼児(6カ以上)
接触機会が多い方
- 医療従事者
- 高齢者施設職員
- 教育関係者
- 接客業の方
接種回数について
- 13歳以上:1回接種(医師の判断により2回接種になる場合もあります)
- 13歳未満:2回接種(2〜4週間隔)
毎年『今年は接種が遅れてしまった』という患者さんがいらっしゃいますが、1月や2月でも接種する意味はあります。流行期が長期化することもあるため、気づいた時点で接種することをおすすめします。
昨年(2024年)から点鼻のインフルエンザワクチン(フルミスト®)が日本でも認可され(第一三共)話題になっています。本剤は、注射で用いる不活化ウイルスと異なり、弱毒化した生ワクチンで、ウイルスの侵入口である鼻腔で免疫を作るため、長い効果と高い予防効果が期待できるといわれています。AとBの3種の株(3価)に対応して作られていますが、注射で期待する体液性免疫だけでなく、細胞性免疫も活性化させるためウイルスが変異しても効果を発揮し約1年程度持続するとされています。しかし流通数が限られる中で成人より子供(2歳から18歳)に使用するよう規定されており成人は接種することはできません。また費用も注射薬の倍ほどです。
報道などを見て経鼻ワクチンに興味を持たれる方は多いかと思いますが、現状で成人は対象外であることを知っていただき、4種類の株(4価)に対応している従来の注射でのワクチン接種を早めに行うようおすすめします。
―監修医師コメント
インフルエンザ予防接種の費用・助成制度・接種場所
接種費用の目安
インフルエンザ予防接種は基本的に自費診療となり、地域や医療機関によって費用は異なります。
● 一般的な費用:相場は3,000円〜5,000円程度(加入健保組合で一部~全額助成などの助成制度がある場合も)
● 高齢者(65歳以上):多くの自治体で助成制度があり、自己負担額の相場は1,000円〜2,000円程度
接種可能な場所
- かかりつけ医
- 内科・小児科クリニック
- 総合病院
- 健康診断センター
- 一部の薬局(薬剤師による接種)
東京桜十字でのインフルエンザ予防接種
東京桜十字では、経験豊富なスタッフによるインフルエンザ予防接種を提供しています。交通アクセスもよく事前予約制のため、仕事の合間などに接種が可能です。 接種をご希望の方は、インフルエンザ予防接種専用ページから詳細をご確認いただけます。
インフルエンザ予防接種の反応と安全性、注意点
「インフルエンザの予防接種を受けると体調が悪くなる」と不安をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。インフルエンザワクチンの副反応と安全性の双方について正しい知識を持つことで、この不安を解消できます。
よくある副反応と対処法
軽微な副反応(10〜20%の方に発生)
- 接種部位の痛み・腫れ:通常2〜3日で改善
- 発熱、頭痛、寒気(悪寒)、だるさ(倦怠感):通常2〜3日で改善
副反応が出たときの対処法
- 接種部位を清潔に保つ
- 激しい運動は避ける
- 十分な休息を取る
- 症状が持続する場合は接種した医療機関に相談
重篤な副反応について
重篤な副反応(アナフィラキシー等)の発生頻度は極めて稀です。医療機関では緊急時の対応体制が整っているため、安心して接種を受けられます。
インフルエンザ予防接種を避けるべき場合
- 発熱している場合(37.5度以上)
- 重篤な急性疾患にかかっている場合
- 過去に何らかの予防接種でアナフィラキシーを起こしたことがある場合
- インフルエンザの定期接種で接種後2日以内に発熱およびアレルギーを呈したことがある場合
副作用や副反応を心配される方が多いですが、現実には殆ど発生しません。2022年の報告では、前記の有害事象報告率は13.7件/10万回接種で、うち重篤(入院や特別な治療を要とするもの)は1.36件/10万回接種と極めて少ないのです。それ以上に、インフルエンザに感染した場合のさまざまな不利益と比較して、予防接種の利益の方がはるかに大きいのが現実です。不安がある場合は、遠慮なく医師やスタッフにご相談ください。
予防接種に対して誤った情報が一部に流されたりしましたが、安全性と効果に対する確かなエビデンスがあり、接種によって人々を救ってきたことは歴史が証明しています。持病を持っている方や接種に不安がある方は医療機関で聞いてください。
集団免疫という言葉があります。貴方が接種することは貴方自身に加えて、ご家族や職場の方々をも守ることになります。その予防接種の輪が広がることで、集団が感染リスクから遠ざかり前記の社会的損失を免れることになります。ぜひ周囲の方にも勧めていただき、予防接種を早めに受けましょう。
―監修医師コメント
まとめ:今すぐ予防接種の予約を
インフルエンザ予防接種は、発病予防と重症化予防に効果がある、科学的に裏付けられた予防策です。
本記事のポイント
- インフルエンザ予防接種は発病リスクを50〜60%軽減
- 重症化や死亡リスクを大幅に低下させる
- 最適な接種時期は10月〜12月上旬
- 副反応のリスクよりも予防効果のメリットが大きい
流行シーズンが本格化する前に、ぜひ予防接種を検討してください。特に高齢者や慢性疾患をお持ちの方、小さなお子さまがいるご家庭では、早めの接種をおすすめします。
東京桜十字では、10月1日からインフルエンザ予防接種をスタートします。Webサイトからご予約ください。
参考文献
1.国立健康危機管理研究機構(旧 国立感染症研究所)「インフルエンザ」
https://id-info.jihs.go.jp/diseases/a/influenza/index.html
2.厚生労働省「季節性インフルエンザHAワクチンの推奨株に関する今後の方針について」
https://h-crisis.niph.go.jp/wp-content/uploads/2024/09/001298087.pdf
3.厚生労働省「インフルエンザQ&A」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html
監修:
東海大学医学部健康管理学領域 主任教授/大学院医学研究科ライフケアセンターセンター長 日本総合健診医学会 理事長.国際健診学会(IHEPA)理事長 桜十字グループ 予防医療事業部 研究・教育・医療サービス開発担当 主管医師 西﨑 泰弘
執筆:
メディカルトリビューン編集部